2026/08/31 16:13

子どもたちの毎日から、生まれました。

名前の書いていない服なのに、「あ、この子のだ」と分かる。保育士をしていると、そんなことがあります。柔軟剤の香りで分かるんです。最初は、それを「よくあること」だと思っていました。でも、あるとき気づきました。この香りは、その子の服についているだけじゃない。その子自身が一日中身につけていて、同じ部屋で過ごす子どもたちも、その空気の中で過ごしている。私たちが香害を知ったのは、ニュースではありません。この光景からでした。

石油系の合成洗剤。香りが強く、長く残る柔軟剤。いま、多くのご家庭で当たり前に使われています。その香りの成分が、化学物質過敏症の引き金になっていると指摘されています。一度発症すると、わずかな香りで頭痛や吐き気、めまいが起こる。学校へ行けなくなる子ども、働けなくなる大人がいます。

2021年8月、消費者庁・文部科学省・厚生労働省・経済産業省・環境省。5つの省庁が連名で、啓発ポスターをつくりました。「その香り 困っている人がいるかも?」2023年には改訂版が出て、文部科学省を通じて全国の教育委員会と学校へ届けられています。国が、繰り返し呼びかけている。それだけの問題になっているということです。

大人は、自分で選べます。子どもは、選べません。着る服も、使うタオルも、息を吸う部屋の空気も。大人が選んだものの中で、一日を過ごすしかない。身体は小さく、呼吸の回数は大人より多い。同じ部屋にいても、受けるものは同じではありません。頭が痛い。なんだかイライラする。集中できない。小さな子どもは、それを言葉にできません。だから私たちは、身体だけの話だとは考えていません。

落ち着いて過ごせること。機嫌よくいられること。安心して眠れること。そうした毎日の過ごしやすさも、子どもたちの育ちには大切なことだと思っています。香りによる負担を減らしていくことは、子どもたちの健やかな身体と、健やかな心を育てることにもつながる。子どもたちが、身体も心も安心して過ごせる環境をつくりたい。それが、私たちの考えでした。